ヌーヴェル・ヴァーグの台頭

フランス映画の歴史で、ひとつの大きな転換期となったのは、1950年代末に起こった“ヌーヴェル・ヴァーグ”。新世代の監督らが作り出した作品の傾向や特徴を指すとともに、新人監督続出という現象、あるいは監督そのものを意味する用語として使われています。


このヌーヴェル・ヴァーグには、二つの主要なグループがあるといわれています。ひとつは「カイエ・デュ・シネマ派」。1951年に創刊された映画専門誌「カイエ・デュ・シネマ」に、熱狂的な映画マニアたちが映画批評を執筆していました。フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロル、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメール、ジャック・リヴェットなど。やがて彼らは映画を製作することを夢見るようになります。

大人は判ってくれない
あこがれ・大人は判ってくれない〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選1〕
勝手にしやがれ
勝手にしやがれ デジタル・ニューマスター版
死刑台のエレベーター
死刑台のエレベーター

でも、当時のフランス映画界は、助監督をつとめたあと、短編映画を何本か製作することから始めるのが通例で、映画学校に通ったわけでもなく、助監督の経験もない者が、デビューすることなどありえないことでした。しかし、政府によって長編映画に対しての製作助成金制度が創設されたことにより、事態は変わります。彼らは、この助成金制度のおかげで映画を製作することができるようになったのです。

美しきセルジュ
美しきセルジュ/王手飛車取り
いとこ同志
いとこ同志
獅子座
獅子座

彼らの何人かは、すぐに優れた映画作家として認められます。「大人は判ってくれない」で鮮烈なデビューを飾ったフランソワ・トリュフォー、「美しきセルジュ」「いとこ同志」などのクロード・シャブロル、そして、センセーションを引き起こしたといわれるジャン=リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」。彼らの作品には、権威や大人たちへの反抗的態度、物語構造の回避や曖昧な結末、映画の伝統への言及、手軽な撮影機材を活用して撮影を行う……などの特徴がみられるといわれています。


もうひとつのグループが「セーヌ左岸派」。「カイエ・デュ・シネマ」派には属さないけれど、同時期に長編映画を撮り始めた映画作家たちを指しています。アラン・レネアニエス・ヴァルダ、クリス・マルケル、マルグリット・デュラス、アラン・ロブ=グリエなど。「カイエ・デュ・シネマ」派に比べると年長で、すでにドキュメンタリーや短編映画でのキャリアを持っていました。

二十四時間の情事
二十四時間の情事
去年マリエンバートで
去年マリエンバートで
5時から7時までのクレオ
5時から7時までのクレオ ~Collector’s Edition~

彼らは、映画によって自己を実現しようというよりは、映画の表現方式を革新すると同時に、イデオロギー的なメッセージを伝えたいと望む知識人だったといわれています。

しかし、ヌーヴェル・ヴァーグの熱気は、1963年を境に冷めていきます。彼らの作品が必ずしもヒットとはならなくなったからです。




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